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天然乙女大暴走

↑の画像桃色無印・きゅ。様作 転載禁止

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打ち上げパーティー②

「蓮っ、確かにパートナーの申し込みをしてから今日までキョーコちゃんと連絡は取れていないけどなっ」
「……」
「前の撮影が相手役女優のNG連発で長引いて苛ついてる事もわかってる」
「だったら黙ってて下さいよ」
「黙ってられるかぁぁぁっ! ここは高速道路じゃないしっ! 100キロ近い速度で飛ばしていい所じゃないっ! って今の赤信号だったぞっ!」
「黙ってないと舌噛みますよ?」
「だぁぁぁぁっ、ドリフトで曲がるなぁっ!」

最上さんとはあの日から一切連絡が取れずにいる。考えたくないがその間に不破か村雨のどちらかが最上さんのパートナーの座を奪っているかも知れない……

そう考えると一刻も早くパーティー会場に行って、最上さんを捕まえなくては!という焦りが沸いて来てしまう。いや、誰が隣にいようがそいつを蹴散らして、必ず彼女をこの手に捕まえる。

彼女にドレスを着せるのも、パートナーとしての位置を手に入れるのも、この俺だ!
誰にも譲るつもりはないっ!

パーティー会場の駐車場に車をつけ、途中から静かになった助手席を見ると、社さんが真っ青な顔で泡を食らっていた。さすがにやりすぎたか……

*****

水分補給で無理矢理に復活して貰ったものの、未だ千鳥足の社さんを引き摺る様に会場へ入った。

「DMの打ち上げも凄かったけど、こっちはセットみたいで凄いな」
「そうですね。面白い趣向ですね」
「って言いながら、目は全くセットにむいてないんだけど、蓮くん?」
「……それは否定しません」

ぐるりと周りを見渡すと不破と村雨の姿が見えた。更に見渡すと天宮さんがいたので、情報収集する事にした。

「こんばんは天宮さん、今日は綺麗だね」
「こんばんは、敦賀さん。私に媚びを売っても何もでませんよ。『ナツ』も別行動ですし」
「別? ナツは誰と来たの?」
「は? それはご自分で確かめるべきでは? 時間ですから私はもう行きますので失礼します」

…雨宮さんからの情報収集はうまくいかなかった。ラブミー部員達には、誉め言葉と言うものが全く通じないということを改めて痛感させられただけだった。
俺の想いがばれていることもわかったが、協力してくれる気配は皆無の様だ。
同じラブミー部員なのに、どうして本人だけが気づいてくれないんだろう……

不破と村雨の敵意剥き出しの視線を感じて見返せば、彼らのそばに最上さんがいない事が解り、パートナーになっていない事にほっとした。
しかし、先日の駐車場でのやり取りでは焦ってお互いに盗られたくないばかりに視線で火花を散らして牽制したのに、邪魔者と言える彼らは一向に懲りていない。
その隙に最上さんには逃げられてしまったのだ。

だから今度こそ……

『『『彼女の相手の席はお前達には絶対に譲れない!』』』

*****

ステージ上に出演者が集まる中、確かに天宮さんの言う通り最上さんの姿が見あたらない。
最上さん、ここではナツか。その姿が見えないのが不安で堪らない。

スッといきなり会場の照明が絞られ、二本のランウェイにスポットライトがあたり、片方の入口から主演の女優が出てきた。

と言うことは……慌ててもう片方の入口を見た。間違いなく彼女はあそこにいるはずだ。
扉が開きそこから出てきた『ナツ』を見て、俺は彼女の才能への嫉妬と独占欲で頭が焦げそうになった。

俺が伝授した彼女のモデルウォークは完璧だった。
紅のドレスは大胆ながらも彼女の白い躯を引き立て、スリットから覗く脚を含め艶やかな魅力に溢れていた。
時々落とす僅かな微笑みが魔性の様に魅力的で、今すぐジャケットで覆ってここから連れ出したい気分だった。
誰だっ、あんな露出度の高いドレスを彼女に贈ったのはっ!

俺の黒い雰囲気を察知したのか、彼女は俺の前をスルーしてステージへ行ってしまった。
悔しいがここで微笑まれたら、本当に君を拐ってしまうかもしれない……

「蓮……お前、余裕なさ過ぎ」
「わかってますよ、俺だって」
「だから逃げられてんじゃねーか」

いきなり割り込んだ第三者の声にびっくりして後ろを向いて……更にびっくりした。

「どうしたんですか、社長。その……普通のスーツは?」
「これが今日の衣装だ。ザ・できる男。どうだ?」
「っていうか、なぜここに?」
「最上君のドラマ成功パーティーに来たわけだが? 前回は気付かれず失敗したからな」

ああ、あのエジプトの置物の中に入って参加した時だな。

「で、今回はつてを頼ったら、これが衣装だと渡されたわけでな」
「「はぁ」」

っていうか、社長なら顔だけで入れるんじゃ……

「ついパーティーと言われると騒ぎたくなるからな。他の奴に連れてきて貰う方が俺自身抑えが効いていい。ところで最上君が貴島君に捕まっているが構わないのか?」
「構うに決まってるじゃないですか!!ああ、くそっ!!ちょっと行ってきます!社長のせいで出遅れたんですから、彼女との事、協力して貰いますよ」
「おーおー、行ってこいや」

最上さんの所についた時には貴島に手をかけられる一歩手前。不破や村雨と同時に貴島に食ってかかる羽目になったが、ナツはそれを楽しそうに眺めていた。

*****

「だからそんなつもりじゃないって何度言ったら君達はわかるのかな?」
「わかるわけないだろう! 今までにも君は最上さんに携帯番号を聞いたりしてたしね」
「何だと!? 人のもんに変な手垢付けてんじゃねぇ」
「「「彼女は君のもんじゃないっ!」」」

歳も身長もそして男としての格付けも上の三人から見下されて言われた尚は地団太を踏みながらその場から去っていった。
三人の一喝は尚にとって一番大事なプライドを粉々に砕くのに充分すぎる力があった。

残った三人がいきなり去った尚を目で追うと、会場のゴミ箱などを蹴りながら歩いていく姿が見えたが、途中で警備員が集まってきて怒鳴り合いになり、果てには警備員に羽交い締めにされ、会場から強制退去させられて行った。

呆れながら見ていた三人だったが、貴島が残る二人に本題を投げ掛けた。

「大体、村雨君は何で京子ちゃんを追いかけてるんだい?敦賀君は彼女と同じ事務所だしなんとなくわかるけど」
「将来ハリウッドで活躍する俺の横にいるにふさわしい女だと思うからね」

もしかしてコイツは痛い奴か?・・・・・・と、その答えに呆れながら貴島と顔を見合わせた時、司会者の声が巨大スクリーンから響いた。

「さて、今から両手に華・・・というか素敵な男性を従えたナツさんにお話をお聞きするとしましょう」

スクリーンを見てみると、いつの間にか俺たちの側から姿を消していたナツが、インタビューエリアで男達に向き合いながら艶やかに微笑んでいた。
ナツと一緒にいる男を、日本にいる筈のない二人に思わず生の映像か疑ってしまった。

「皇貴さんっ? マイクっ?」
「えっ? あれ、誰?」
「ごめんっ! また会う機会があったら説明するよ!」

慌てて社長の姿を探して戻る。そう、考えてみれば社長の衣装はアルマンディのスーツだ。
と言うことは、社長を招待したのはマイク。
ではなぜマイクがこの打ち上げに来たのか?

「こちらはマイク・ディランディ、アルマンディのチーフデザイナーです。こちらはLMEの宝田皇貴さん、副社長さんと言ってもよろしいのかしら?」

司会者の前で英語でナツとマイクは話をしている。
もしかしてあのドレスはマイクが贈ったのか?

「ええと……ナツさん、よろしいですか?」
「あら、ごめんなさい。マイクがパーティーを楽しみたいと言うもんですから。さっきお尻触られて頭からマティーニかけちゃったのに」

マイクっ! いつかマティーニのプールに沈めてやるっ! 後で覚えておけっ!

「ナツさんの魅力は何にも変えがたい何かがあるんですかねぇ」
「ありがとう、嬉しいわ。お兄さんとも遊んでみる?」
「ええっ……と、それは……」
「ナツ、ちょっとお遊びが過ぎますよ。今日のあなたには大事な事がある、そうですよね?」

本気で狼狽える司会者を見て、皇貴さんが救いの手を差しのべた。
イタズラっぽく皇貴を見るナツを見て、慌てて司会者は皇貴に向き直ると答えを待った。

「あら、怒った? だって楽しい事したいもの。はい、副社長」

ちゅ、とナツは渡すマイクに軽くキスを落とした。
その僅かな事が司会者も含め、男どもの視線を一身に集め、俺の心を黒く染めていく。

「ナツには勝てませんね。まぁ、私達をこの場に呼び寄せた張本人のようなものですからね。さて!私とマイクが今ここにいるわけは・・・・・・・・・・ナツがアルマンディのレディース部門立ち上げの際の専属モデルに決定したからです!私達はその契約確認の為にここにいます」

会場全体がその発表の重大さにどよめき、記者達は携帯片手に走り、カメラマンは3人のショットを何度も撮っている。

皇貴さんとマイクがこの打ち上げに来ていたのは、ナツからの招待と言う訳だったのか?
これじゃまるで打ち上げジャックだね、ナツ。

そして俺はというと……これで彼女との接点が一つ多くなったと心の中でガッツポーズしたい気分だった。
と、後ろから頭をこつんと叩かれた。

「馬鹿者が。考えていることが駄々漏れだ」
「社長! 知ってたなら教えてくれたって……」
「明らかに小さな幸せに喜びを感じています、って顔をされて歩かれたら堪らん。大体お前と絡むかどうかもわからんのに、よくそこまで先走れるな?」
「放って置いて下さい!」

先輩としてまたアドバイスしたり、一緒に撮影に行ったり……
俺の頭はその小さな幸せにフル回転していたのだった。

第7話へ続く

__

ムフフぅ~~~~~社笑いで次もお待ちしますわよぉ
皆さんもそう思いませんこと?

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